幅広い音楽ファンから絶大な支持を受けるJUJUが、『報道ステーション』(テレビ朝日系)のオープニング・テーマを担当するJ-SQUADのメンバーでも話題のジャズ・トランペッター黒田卓也と共演する。ともにN.Y.時代から交流を継続してきた両者によるセッションの魅力とは?
JUJU が初めてのジャズ・アルバム『Delicious』をリリースしたのは2011年のこと。もともとジャズが好きで、18歳で単身ニューヨークに渡ったのも「to be a singer」のためだった。ご存じのようにニューヨークは、あらゆる刺激に溢れ、音楽を自由に吸収するのに最高の環境だ。JUJUは、クラブ通いをしていくなかで、親しくなったミュージシャンとジャズを歌うようになり、「ジャズを歌うのがやっぱり好き。どこにも力が入ることなく、自分なりの解釈で歌えて楽しい」と歓びを感じる一方で、「3度の飯よりジャズが好き。ジャズのことしか考えていない人達を前に、R&Bなど色んなジャンルを歌いたい、という私がジャズ・シンガーを名乗るのは失礼なのではないか…」という思いから、ジャズを封印してしまう。なぜ? と惜しむ気持ちが募るが、それが現在のシンガー、JUJUの誕生につながり、2006年の「奇跡を望むなら…」の大ヒットを生むことになる。
その封印は、人生経験を積んだ45歳とか、50歳とかで解く予定だったが、思わぬところ、それは、スヌーピーとのコラボレーション企画が持ち込まれたことで解かれることになった。それが冒頭で触れたアルバム『Delicious』だ。「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム」や「ナイト・アンド・デイ」といった永遠の名曲、スタンダード・ナンバーを中心にしなやかに、素直に、そして、エレガントに歌った。
8月にブルーノート東京で6日間に渡る公演を行った。全ショウ満席、JUJUのジャズセットにオーディエンスが酔いしれた。
JUJU JAZZ LIVE 2017
2017 8.8 – 8.14 (8.11 OFF)
photography = Takuo Sato
本人曰く、「ポップとジャズでは声帯の使い方が違い、ジャズの方がナチュラル」だとか。だからだろうか、ジャズ・シンガーのJUJUは、コケティッシュで、さらにチャーミングな声になり、古き良き時代の恋物語を堪能させてくれる。
そんなJUJUがブルーノート東京の舞台に初めて立ったのはアルバム発売直前だった。客席にはJUJUのヒット曲ではなく、彼女のジャズをライブで聴きたい大人の観客が詰めかけて、ソールドアウトになった。その時は、たった1日のスペシャル公演という色合いが強かったが、翌年からは毎年8月にジャズのライブをブルーノート東京で行うようになり、2014年からはNY在住の気鋭トランペッター、黒田卓也との共演が3年間続いた。今年のライブは、1日の休演日を挟み、1週間のロング公演になったが、残念ながら黒田卓也との共演が叶わなかったところ、こうしてJUJU初出演の“Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN”で再現されることになった。
昨年にブルーノート東京で行われたJUJUと黒田卓也率いるクインテットとのライブ。ジャズのネクスト・ウェイヴを決定づけた。
JUJU JAZZ LIVE 2016 with TAKUYA KURODA QUINTET from NY
2016 8.9 – 8.15 (8.12 OFF)
photography = Takuo Sato
昨年は、MISIAとの共演で、黒田卓也は、観衆の歓声を浴びた。パワフルな演奏から放たれる存在感もそうだけれど、シンガーとの共演で化学反応を起こせるトランペッター、もっと言えば、女性アーティストの魅力をより引き出すことが出来るミュージシャンであることを超クールなパフォーマンスで見せた。JUJUとは気心知れた仲、そして、海辺の野外会場ということで、さらにスケールアップされることだろう。
服部のり子(はっとり・のりこ)
レコード会社勤務を経て音楽ライターに。女性誌や新聞を中心に執筆し、現在『マリソル』(集英社)や毎日新聞でアーティストや新作などを紹介。また、JALの機内オーディオ放送の企画、制作等もしている。