ジャズ・トランぺッターのロイ・ハーグローヴ率いる“RHファクター”が初登場!スナーキー・パピーでも活躍するボビー・スパークス、ジェイソン“JT”トーマス、元ジャネイのルネー・ヌーヴィルという豪華メンバーと共にどんなステージを繰り広げてくれるのか。
テキサス州ダラス周辺から登場したジャズ・トランぺッターのロイ・ハーグローヴ率いるRHファクターが『Hard Groove』で登場したのは2003年のこと。地元のブッカー・T・ワシントン高校ではエリカ・バドゥと同窓生でもあったロイは2000年に発表されたディアンジェロ『Voodoo』、エリカ・バドゥ『Mama’s Gun』、コモン『Like Water For Chocolate』の、いわゆるソウルクエリアンズ三部作に参加してネオ・ソウルの隆盛に貢献。その後、ディアンジェロ、エリカ、コモンのほか、Q・ティップやミシェル・ンデゲオチェロらをゲストに招き、ディアンジェロの〈Voodooツアー〉を共に支えたジェイムズ・ポイザー、ピノ・パラディーノ、アンソニー・ハミルトンといったソウルトロニクスの面々やヴェテランのバーナード・ライト、コーネル・デュプリーらも巻き込んでR&B/ヒップホップのフィールドに斬り込んだプロジェクトがRHファクターだった。
ロイ・ハーグローヴ率いるRHファクターライブ映像
Roy Hargrove ‘RH factor 2003 Live Jazzbaltica
2004年にEP『Strength』、2006年に『Distractions』も出したRHファクターのメンバーは流動的ながら、主要構成員としては、現在スナーキー・パピーでも活動するボビー・スパークス(key)やジェイソン“JT”トーマス(ds)のほか、キース・アンダーソン(tenor sax)、トッド・パースノウ(g)、レニー・ストールワース(b)、そして“Hey Mr.D.J.”のヒットで知られる女性デュオ=ジャネイにいたルネー・ヌーヴィル(vo,key)らが名を連ねる。特にボビーとJTはダラス屈指の黒人プレイヤーで、彼らがノース・テキサス大学でジャズを学ぶ白人学生たちと出会って誕生したのがスナーキー・パピーであることを考えれば、マイケル・リーグも話していたようにRHファクターはスナーキー・パピーの兄貴分であり、RC&ザ・グリッツなども含めた地元の後進に与えた影響も並ではない。そんな彼らがロイの実弟ブライアン・ハーグローヴ(key)やブルース・ウィリアムズ(alto sax)を含めた9人編成で、2013年の公演以来4年ぶりに日本のステージ(BNJFおよびブルーノート東京での単独公演)に立つ。
ブルーノート東京のステージに10年ぶりに登場した2013年のライヴ。
ROY HARGROVE & his RH FACTOR BAND featuring Bobby Sparks, Renée Neufville + more
2013 2.26 – 2.28
photography = Takuo Sato
ロイはビッグ・バンド名義やクインテット名義での来日公演も行なっているが、RHファクターでは、エフェクターを使って奔放にトランペットを吹くロイを中心に、3人の鍵盤奏者が多様な音を鳴らし、フェラ・クティのようなアフロ・ビートから、ファンカデリックやスライ&ザ・ファミリー・ストーンなどのカヴァーまでを披露。漆黒のファンクネスが渦巻くステージは地元ダラスの深南部的な泥臭さやルーズさがあり、踊り出したくなるものだ。近年はディアンジェロの復活作『Black Messiah』にも参加していたロイだが、今ならジャズ側からネオ・ソウル・リヴァイヴァルを促したロバート・グラスパー・エクスペリメントの先駆けとも言えるRHファクターのグルーヴは、“Hard Groove”という曲名通り強烈そのもの。全身で感じたい。
女性デュオ=ジャネイにいたルネー・ヌーヴィル
Zhané – Hey Mr. Dj (93:2 HD) /1993/
Parliament「Give Up The Funk」やFunkadelicの「I’ll Stay」のカバーも披露
RH Factor live @ Caribbean Sea Jazz 2015
→ ARTISTS|ロイ・ハーグローヴ’s・RHファクター(9.23 sat.出演)
林 剛(はやし・つよし)
音楽ジャーナリスト。R&B/ソウルをメインに様々な媒体で執筆。ディスクガイド(ディアンジェロを軸にした『新R&B入門』、マイケル・ジャクソンを軸にした『新R&B教室』)もSPACE SHOWER BOOKSから発売中。