Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2017 (9.23 sat., 9.24 sun.) 開催中止のお知らせ →
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2017 9.23 SAT., 9.24 SUN.
2017 9.23 SAT., 9.24 SUN. Yokohama Red Brick Warehouse

〈新世代〉がキーワード! 過去と現在を繋ぎ、シーンの未来を創出する6組をピックアップ

〈新世代〉がキーワード! 過去と現在を繋ぎ、シーンの未来を創出する6組をピックアップ

音楽ジャーナリストの原雅明が〈新世代〉という切り口で、リアン・ラ・ハヴァス、ムーンチャイルド、カマシ・ワシントン、グレゴリー・ポーター、クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズ、ジェイコブ・コリアーの6組をピックアップ。それぞれの魅力やライブの観どころを考察する。

 

Lianne La Havas

 ロンドンで生まれ育ち、ギリシャ人の父とジャマイカ人の母を持つシンガー・ソングライター、リアン・ラ・ハヴァスがアルバム『Is Your Love Big Enough?』でデビューを飾ったのは、2011年、彼女が22歳の時だった。スモーキーでちょっと翳りのある、しかし伸びやかなヴォーカルと、ギターを中心にした生楽器の響きを活かしたプロダクションが彼女の音楽を際立たせていた。時流に流されないタイムレスな魅力と、さまざまな音楽に繋がっていく開かれた音楽性を感じさせた。

 その才能は直ぐさま認められ、プリンスは彼女をジョニ・ミッチェルと比較して褒め称え、『Art Official Age』の録音にフィーチャーし、 Saturday Night Liveで共演もしている。ファースト・アルバムのツアーを勢力的にこなす頃には、彼女の人気は決定的なものとなった。そのツアーを終えると、彼女はジャマイカを旅して、自身のルーツと向き合い、次のアルバムのインスピレーションを得た。そうして、2015年にリリースされたのがセカンド・アルバム『Blood』である。

『Blood』でその才能が大きく開花、コンテンポラリーでモダンなソウル・シンガーの誕生を印象付けた。
Lianne La Havas – Unstoppable (Official Video)

 このアルバムで彼女はその才能を大きく開花させた。ヴォーカルにはさらに磨きがかかり、プロダクション面ではストリングスの導入など音楽性の幅を大きく広げ、ビジュアルのイメージも刷新して、コンテンポラリーでモダンなソウル・シンガーの誕生を印象付けた。ロバート・グラスパーの新曲「The Cross」でコモンと共演するなど、活動の幅も広げていて、いま最もライブを観たいシンガーの一人である。

ソロで挑むリアン・ラ・ハヴァスはどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、期待が高まる。
Lianne La Havas – Midnight | Sofar London

 

Moonchild

 ムーンチャイルドは、名門と言われる南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校でジャズを学んでいたアンバー・ナヴラン、マックス・ブリック、アンドリス・マットソンによって、在学中の2012年に結成された。そして、ほどなくセルフ・リリースでファースト・アルバム『Be Free』を発表する。ベン・ウェンデルらをゲストに招いたこのアルバムは、かつてネオ・ソウルと呼ばれたサウンドに素直にシンパシーを表明して、クールでソウルフルなサウンドを確立し、少なからぬ注目を集めた。2014年にUKのトゥルー・ソウツからセカンド・アルバム『Please Rewind』をリリースすると、その人気はワールドワイドに拡がっていった。

R&Bやヒップホップの影響を受けつつ、西海岸発とあってメロウでレイドバックした空気感が魅力。
Moonchild – ‘The Truth’ (Official Video)

 アンバー・ナヴランの澄み切ったヴォーカルを軸に、R&Bやヒップホップの影響を受けたハイブリッドで芯のあるサウンドが特徴だが、ロサンゼルスをベースに活動していることもあって、メロウでレイドバックした空気も大切にされている。独特の浮遊感がある空間が作られていくのも、ムーンチャイルドの魅力の一つだろう。

 
 また、それぞれがマルチ・プレイヤーで、管楽器を中心にさまざまな楽器を演奏するので、心地良いなかにもジャズに裏打ちされた確かな演奏スキルが感じられる。特にライブにおいては、ステージで複数の楽器を操るのはお手のものといった感じに、最小限の編成で(サポート・ドラマーを交えた4人編成になる)、実に豊かなアンサンブルを聴かせる。それは最新作『Voyager』でさらに明らかにもなったが、録音物だけではなく、ライブ・パフォーマンスにおいても突出したものを持っていることを感じ取れるはずだ。

2016年のライブの模様。アンバー・ナヴランの澄み切ったヴォーカルを横浜の心地良い風とともに味わいたい。
MOONCHILD : LIVE @ COTTON CLUB JAPAN (July.22,2016)

 

Kamasi Washington

 ロサンゼルスのサウス・セントラル出身のサックス奏者カマシ・ワシントンが、2015年にフライング・ロータスのレーベル、ブレインフィーダーから3枚組というヴォリュームのアルバム『The Epic』で登場したことは、大きなトピックとなった。ケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly』への参加などもあって、カマシと彼の周辺で活動するミュージシャンたちへの関心はどんどん高まっていった。

 だが、カマシは突然登場したわけではない。彼らがムーヴメントと呼ぶように、カマシ、サンダーキャット、ロナルド・ブルーナー・ジュニア、キャメロン・グレイヴス、マイルス・モズレーなどは、それぞれがミュージシャンとして腕を磨き、キャリアを重ねていくなかで、自分たちの基盤である“ジャズ”をプレイする場を常に大切にしてきた。そして、30日間に及ぶスタジオ・セッションで、カマシたちは170曲もの楽曲を録音した。そこから、『The Epic』などそれぞれのソロ・アルバムが生み出されていったのだ。

 カマシの風貌とダイナミックな演奏は、ブラック・ミュージックとしてのパワーを持っていた、60年代から70年代にかけてのジャズを思い起こさせるが、同時にヒップホップやR&Bなど、現在進行形のサウンドをミュージシャンとして演奏してきた経験が、彼の〈ジャズ〉を更新してきた。カマシが極めて現代的な感覚を持った音楽を作り出していることは、XXやFKAツイッグスなどを擁するUKのレーベル、ヤング・タークスと新たに契約を結んだことが象徴しているだろう。大きなフェスへの出演も経てきた、カマシのさらにパワーアップしたステージは必見だ。

カマシ・ワシントンの醍醐味はやはりライブ。その風貌とダイナミックな演奏を間近で体感して欲しい。
Kamasi Washinton performs “The Rhythm Changes” | Pitchfork Music Festival 2016

 

Gregory Porter

 グレゴリー・ポーターは遅咲きの人だ。デビュー・アルバム『Water』を発表したのは、40歳になろうという頃だった。しかし、2010年にリリースしたこのアルバムは、いきなりグラミーのベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバムにノミネートされた。ジャズ・ヴォーカルの世界に新しい風を吹き込んだからだ。怪我のために挫折をしたが、アメリカンフットボールの選手として将来を嘱望されていた恵まれた体格は、圧倒的な声量と豊かな音域を与えた。

 その発見されたバリトン・ヴォイスに多くの人々が魅了されることになったが、現ブルーノートのCEOであるドン・ウォズもその1人だ。みずから熱心に契約に動いて、アルバム『Liquid Spirit』(2013年)のブルーノートからのリリースを実現した。そして、見事に翌年のグラミーで待望のベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバムを受賞し、名実共にグレゴリー・ポーターは現在のブルーノートを代表するシンガーとなった。

ブロードウェイ・ミュージカルでも活動してきたというだけあって、一挙一動が絵になるパフォーマンス。
Gregory Porter – Liquid Spirit

 ポーターは、自身も影響を口にしているマーヴィン・ゲイやビル・ウィザースなどの男性ソウル・シンガーの系譜も受け継ぐだけの技量と才能を持っている。オーセンティックで堂々とした歌いぶりは、ジャズのみならず、ソウルやハウス(代表曲「1960 What?」はクラブでもヒットした)のファンも魅了した。そして、2017年、最新アルバム『Take Me to the Alley』でも再度グラミーに輝いている。

クラブでも耳にすることが多かった「1960 What?」は、ジャズだけに収まらない彼のセンスを感じる楽曲。
Gregory Porter – 1960 What? – Lowlands 2014

 

Chris Dave & The Drumhedz

 近年ドラマーへの注目/関心が高まっているが、それはこのクリス・デイヴの活躍から始まったと言っても過言ではない。テキサス州ヒューストンに生まれ、教会で出会ったドラムと、父と一緒に聴いたジャズが彼の将来を決定付けた。大学で学んでいるときにジャム&ルイスに認められ、ミネアポリスのR&Bバンド、ミント・コンディションの録音に参加して以来、ミシェル・ンデゲオチェロ、マックスウェル、ケニー・ギャレット、ロバート・グラスパー、アデル、ディアンジェロなどなど、さまざまなアーティストから声が掛かり、録音やステージを共にしている。

ドラマーへの注目/関心が高まる昨今、その中心にいるクリス・デイヴの真骨頂が垣間見える映像。
Chris Dave – Medley (Pt. 1)

 ユニークなドラム・セットで、J・ディラのよれたビートからアフロ・ビートまでを涼しい顔をして叩き出すプレイは、ドラムという楽器の可能性を広げると共に、そのドラムを媒介にして音楽シーン全体を活性化させているとも言える。彼のメイン・プロジェクトであるドラムヘッズでの活動はまさにそうだ。出自であるゴスペルやジャズから、ヒップホップ、R&B、レゲエやロックまでがシームレスに繋がっていく。ドラムヘッズが今年6月に発表したミックステープ『Drumhedz Radio Show』は、優れたDJミックスがそうであるように、タイプの異なる音楽が次々と展開されていく。しかもラジオ・ショー仕立てで、クエストラヴから始まって、グラスパーやカマシ・ワシントン、DJジャジー・ジェフからジェイソン・モランやドン・ウォズまでがシャウトアウトで登場するという楽しい構成だ。これを聴くだけでも、今回のステージへの期待は高まる。

名だたるアーティストが絶賛する、一度見た者の目と耳を釘づけにする超絶テクニック。
Chris Dave and The Drumhedz at Guitar Center’s Drum-Off Finals

 

Jacob Collier

 1994年にロンドンで生まれたジェイコブ・コリアーは、2013年にスティーヴィー・ワンダーの「Don’t You Worry ‘Bout A Thing」のカヴァー演奏を収めた映像をYouTubeにアップして、いきなり有名な存在となった。当時まだ19歳になったばかりの若者が一人でアカペラをし、多数の楽器も弾きこなしてみせる様子は瞬く間に世界に拡散された。その映像は単にアクロバティックなことを見せていたわけではなく、その歌と演奏に飛びきりのセンスと才能があることを示していたからだ。そして、一枚のアルバムもリリースしないまま、その存在をハービー・ハンコックやクインシー・ジョーンズまでが褒め称えるということにまで発展した。

スティーヴィー・ワンダー「Don’t You Worry ‘Bout A Thing」のカヴァーをYouTubeにアップし話題に。
Don’t You Worry ‘Bout A Thing – Jacob Collier

 そして、いきなりモントルー・ジャズ・フェスティヴァルのステージに立つという快挙も成し遂げた。しかも驚くべきことに、彼はライブにおいても、すべての楽器を一人で演奏し、あのYouTubeの映像をそのまま再現するかのようなワンマン・パフォーマンスを見せた。その仕組みはマサチューセッツ工科大学との共同プロジェクトで開発されたテクノロジーが駆使された。

 だが、そうしたセンセーショナルなパフォーマンスだけが彼の音楽性を特徴付けているわけではない。有能なミュージシャンの柔軟性あるコレクティヴとして多方面から注目を集めるスナーキー・パピーが、ジェイコブを録音に招いたように、彼の音楽性はネットだけではなく、リアルな音楽空間においても確実に浸透し始めている。

2016年作『In My Room』収録曲、「Don’t You Know」のライブ映像。
Don’t You Know – Jacob Collier (Live @ Village Underground, London)

原 雅明(はら・まさあき)
音楽評論家として執筆活動の傍ら、レーベルringsのプロデューサーやLAの非営利ネットラジオ局の日本ブランチdublab.jpのディレクターも務め、都市や街と音楽との新たなマッチングにも関心を寄せる。
cooperation = Mikiki編集部

【Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2017(9.23 sat., 9.24 sun.) 開催中止のお知らせ】

「ドナルド・フェイゲン&ザ・ ナイトフライヤーズ」は、ドナルド・フェイゲン氏の急病により、来日および本フェスティバルへの出演がキャンセルとなりました。フェイゲン氏来日キャンセルを受け実行委員会で検討しました結果、本フェスティバルの開催を中止することを決定しました。
本フェスティバルを楽しみにしてくださっていたお客様には、多大なご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。

2017年 9月 14日
Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 実行委員会

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